2007年9月26日

波動展望のサイクル分析論 目次

波動展望のサイクル分析論 目次


相場のサイクル分析 ~ はじめに
サイクル発生の根拠
~ エリオット、デューイ、ピグー
~バブルの理論、ギャン
景気循環論における波動サイクル

景気の長期サイクル 
(1)コンドラチェフ・サイクル
(2)クヅネツク・サイクルと(3)ジュグラー・サイクル
(4)キチン・サイクル(短期循環)

◇ケインズ経済学による景気循環論の軽視
1700年以降のシュワーベ・サイクル

◇サイクルの分類
フィボナッチ級数による典型サイクルとN波動フラクタル

2007年8月27日

フィボナッチ級数による典型サイクルとN波動フラクタル

 エリオットの波動理論では衝撃波(インパルス波)は三段5波動、修整波(コレクティブ波)は二段3波動の合計8波が基本となり、この合成によって価格変動モデルを作ることができるということを基本にしている。 8波動の数学的根拠はフィボナッチ級数であり、森羅万象の基本的な数字構成であるとする。
  ボトムからボトムまでの距離は8単位周期、34単位周期、144単位周期となる。8年サイクル、34ヶ月サイクル、34週サイクル、34日サイクル及びそれに近いサイクルというのが、かなり観測される。 144単位周期は上昇と下降の1循環を形成しているので自己完結であるが、上昇の第5波に続く修整第1波は10単位となるので、正確には8.5単位周期、36単位周期となる。 144週なら約2.8年周期、5.6年、11.2年、22.4年、、、、等、いろいろな数字が出てくる。

 「上昇→下落→再上昇」を1セットとしたN字型の3波動を基本(図1)と考え、3波のそれぞれをさらにN字型の3波で構成してゆくと(図2、図3)、どこを見てもN字型のフラクタルな波動モデルとなる。N字型の角度を変えてゆけば、実際の価格変動モデルにかなり近づくことができる。
 この波動における最小のボトムサイクルは2。現実的には3波動と3波動の6となる。6の倍数の6、12、24、48、96、、、あるいは18、36、72、144というのがモデル的なサイクルになる。

◇サイクルの分類


◇サイクルの分類
 よく、長期サイクルとか、中勢サイクルとか、人によってはプライマリー・サイクル、メジャー・サイクル等という表現を使うが、景気循環を含めたサイクル分類を作るとしたら、下表のようになる。名称にこだわるよりは、ジュグラー・サイクルにあたるものを長期サイクル、キチンサイクルにあたるものを中期サイクル、数十週単位、30週とか42週とかを中勢サイクル、日足で1ヶ月程度、乃至は2、3ヶ月のものを短期サイクル、それよりも細かいものは極短期サイクル(リズム)として大雑把に捉えておけばよいと思う。筆者の場合は「中勢の42週サイクル」等の表記をして誤解のないようにしている。
 プライマリー・サイクルという言葉はHALマーケットサイクル社のWブレザートによって最初に使われた。メリマンも使っている。
 PRIMARY=主要な、一次的なという意味であり、対象によっては33週がプライマリーであったり、18週がプライマリーであったりするので、そのアナリストが何をもってプライマリーと言っているのかを知っておく必要がある。

1700年以降のシュワーベ・サイクル


◇ケインズ経済学による景気循環論の軽視

◇ケインズ経済学による景気循環論の軽視

 ケインズ自身は景気の循環性について述べているが、学派としてのケインジアンはマクロ経済政策によって完全雇用、成長促進、物価安定、景気循環の克服が可能だと主張し、循環論を無視するような態度をとってきた。しかし、戦後の現実問題として、在庫循環、設備投資循環、目に見える景気循環は存在し、短期循環を政策で克服しようとすると、政策ラグによってかえって循環の揺れが大きくなることが実証されている。医者の誤診が患者の容態を悪化させるようなことが、現実の経済においてもいたるところにある。

 確かに、キチン・サイクルは場所、時を選ばずに存在し、統計的に相当程度有意であるが、コンドラチェフサイクルとなると、まだ4つ目の波が終了し、5つ目の波がスタートしたかも知れないという程度であり、確信するに足るデータとはいえず、推測の域を出ない。また50年、100年に及ぶ経済活動の変遷が、経済史に自律的な周期に基づくものに過ぎないとまで行ってしまえば、それはコンドラチェフ教になってしまう。経済政策などに頼らなくても景気は回復するということにもなってしまう。確かに戦後の経済学も経済政策も、景気の波を消すことはできなかったのは事実である。

 サイクルというのは、複合的であり、多層的であるとすれば、18年サイクルが3つ合成された54年サイクル、11年周期が5つ複合した55年サイクルというものが存在する可能性は推測できる。その上には100年以上の周期で繰り返すヘゲモニー・サイクルもあるという説すらあるし、直感的にはそういう大きな流れ、渦の中でもがいているのが人間の経済活動の宿命なのかもしれない。

(4)キチン・サイクル(短期循環)




(4)キチン・サイクル(短期循環)

 一般的に景気循環という場合はこのキチン・サイクルをさす。
 米国のキチンが発見した40ヶ月サイクル。1923年発表。過去30年間の米、英の物価、利子率、手形交換高の変動周期。
 主要因は在庫投資の変動によるもので、「在庫循環」とも言われる.戦後の日本、発展途上国などにも共通に見られる基本循環。 米国では1850年代から1990年までに、30回のキチンサイクルが存在し、そのうち17回が3-4年周期であった。

 日本のキチン・サイクルは明治維新から第二次大戦までの70年間で25回、平均周期35ヶ月。大戦間の20年間に6回、平均周期38ヶ月。戦後は経済企画庁の基準日によると、12循環、平均50ヶ月である。
 米国の戦後キチン・サイクルは1988年段階までの観測で8回、平均周期はベトナム戦争期の異常な時期(106ヶ月)を除くと47ヶ月で、3年好況1年不況の組み合わせの繰り返しである。 平成不況が長期化したのは、コンドラチェフサイクル、クズネツク・サイクル、ジュグラー・サイクルのボトム形成が重なり合ったためである。逆にいえば、仮に1998年がボトムであれば、現在は新たなコンドラチェフ・サイクルの成長期に入ったということができるかもしれない。

(2)クヅネツク・サイクルと(3)ジュグラー・サイクル

(2)クヅネツク・サイクル(長期循環)

 米のクズネツクの発見した1850年以降のGNP統計における22、23年周期。1930年発表。
 一次産品価格と生産量のトレンドを除去したデータから22年周期の循環を発見 

太陽黒点のへール・サイクル(磁極転換サイクル)22年周期
=米中西部干ばつ22年周期=クヅネツク・サイクル22年周期

 →

 経済活動に影響を及ぼす気象条件の周期的変化が太陽活動を基点として22年周期で循環している 類似の長期循環としてはリグルマンの建築循環(17-18年周期)がある。
 54年のコンドラチェフ・サイクルとの整合性を考えると、リグルマン・サイクルが3つでコンドラチェフ・サイクルを構成するという考え方がなじむ。商品相場においては18年サイクルという考え方も多く、為替においても変動相場制となってからのデータが少ないものの、推測として18年サイクルが考えられている。

(3)ジュグラー・サイクル(中期循環)

 世界で最初に景気の波を発見したことで「景気循環の父」といわれるのがジュグラー。

 「仏、英、米における商業恐慌とその周期的反復」を1860年に発表。
 仏、米、英の物価、利子率、銀行貸出に7-10年の周期がある。設備投資の変動を主要因としており、「設備投資循環」とも言う。「ジュグラー・サイクル」と名づけたのはシュンペーター。

 ◎マルクスは「資本論」等で10年周期の恐慌の繰り返しを指摘(=マルクス・サイクル)した。
 周期的恐慌論であり、資本主義の悪性=打倒対象としての理由付けの論拠とした。マルクスは中期循環の根拠は「機械設備更新投資循環」と説明したが、当時は限定的に当てはまったのだろうが、現代までを考えるとすっきりしない。

 ◎エンゲルス「空想より科学へ」 「工業と商業の世界全体、すなわち生産と交換は、ほぼ10年に1回、大混乱に陥る。商業は停止し、市場は充満し、生産物は山と積まれて買い手がなく、現金は姿を隠し、信用はきえ、工場は閉鎖し、労働大衆は生活手段を生産しすぎたために生活手段に事欠くようになり、破産が相次ぐ。不況は数年続く。生産力も生産物も大量に浪費され、破壊される。そして山積みとなった商品が多かれ少なかれ減価して、生産と交換が再び動き始めるまで、こういう状態が続く。この歩調は次第に早くなって、早足になり、駆け足に変わり、さらに速度を早め、疾走となる。それはまさしく工業上、商業上、信用上、投機上の障害物競馬の手綱のない疾走であって、最後には命がけの飛躍をして音を立ててドブの中に飛び込むのである。これが幾たびも繰り返される。」 

 資本主義経済は技術革命的な成長を遂げつつ、社会主義的な要素も取り込みながら、当時に比べれば少しはマシになったのかもしれないが、相変わらず周期的にバブルを発生させ、当時と大して本質は変わっていないのかもしれない。

 このサイクルは過去100年間において、さまざまな経済発展段階におけるさまざまな国で存在してきた。そのため、太陽黒点の11年周期との一致をとく「太陽黒点周期説」も唱えられている。

 ◎H・クラーク(英)は、英国の飢饉や恐慌が10-11年周期で規則的に発生している。これは偶然の一致ではないはずで科学的に解明すべきとして「物理経済学」を提唱した。クラークによれば景気循環(10-11年周期)は天文学的周期や気象学に関係つけられるとした。因みに最近ではエコノフィジックス(経済物理学)を提唱する研究者もいる。

 ◎ジェヴォンズの太陽黒点説

 論文「太陽周期と穀物価格」を発表、11年周期で盛衰を繰り返す太陽黒点周期(ウォルフ黒点相対数周期=天文学者シュワーベ・サイクル)と穀物価格周期が一致していることを検証。

 (注)日本の明治維新以降のジュグラーサイクルは、平均10年、1988年段階で11回観測されている。1977年に続くボトムを1987年円高不況の1986年とすれば9年。バブル絶頂とその後の平成不況のボトムである98年までは12年。98年以降の株価上昇はこのジュグラー・サイクルの強気局面という解釈も成り立つ。